大阪地方裁判所 昭和25年(ヲ)218号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
(事實)
債權者はその所有土地を昭和二十二年二月一日大阪府食糧營團に賃貸し營團は右地上に建物を建設所有していたところ同二十三年二月二十日閉鎖機關に指定せられた。債權者の得た右建物處分禁止の假處分決定に對し債務者から異議を申立てた。
債權者は、右土地賃貸は一時使用のためのものであつて三ケ年の期間は既に滿了したのに債務者は土地の明渡をせず且建物を競賣しようとしているから仮處分は理由があると主張した。
債務者は、(一)本件賃貸借の目的は假設建物の建設ではないから右賃貸借は三十年間存續する。(二)假にそうでないとしても、(イ)本件假處分は閉鎖機關の財産の處分權を制限する行爲であつて、閉鎖機關令第四條第一項に「何人も指定日以後は閉鎖機關の財産上の權利義務に變更を生ずべき行爲をすることができない」と規定しているのは私人たると公の機關たるとを問わず特殊淸算人以外のものによる變更行爲を禁止して規定であるから、右のような假處分は許されない。(ロ)本件假處分によつて特殊淸算は一頓挫を來したが、かくの如きは同令第二十七條の三「閉鎖機關を當事者とする訴訟關係人は閉鎖機關の特殊淸算の遂行を遲延せしめないようにつとめなければならない。」なる規定に違反すると抗爭した。
これに對して債權者は(イ)閉鎖機關令は大藏大臣及び行政所管大臣に對し據るべき準則を定めた行政法規であり「何人も」は行政部門の「何人も」と解すべきであつて、司法裁判權或は私權保護請求權を否定したものでない。(ロ)本件申請は閉鎖機關の財産上の權利義務に變更を生ずべき新たなる行爲を求めるのではなく、既存の權利關係の確認保護を求めるものである。(ハ)假にそうでないとしても土地返還義務の履行は特殊淸算人の職務執行行爲に屬するから同令第四條但書に該當し、右特殊淸算人の行爲は同人の側からする自動的變更行爲たると第三者側からする他動的變更行爲たるとを問わないもの解すべきであると反駁した。
(判斷)
さきになされた假處分決定を取消し申請却下。
判決は先ず本件借地權の設定が一時使用のためのではなかつたと認め、從つて期間は三十年となるものと解し本件申請はこの點でないとし理由がないと判斷したが、假にそうでないとしても本件假處分は閉鎖機關令第四條に違反し許されないものとして次のように判示した。
「同令第四條は、(中略)その趣旨とするところは要するに閉鎖機關の急速にして強力な解體と淸算を圖るため閉鎖機關の指定日以後その資産の分散變動を一切禁止し、たとえ指定日以前の原因に基き生じた權利の行使による場合といえどもこれを許さず、ただ特殊淸算人においてのみこれを爲し得るものとし、以つて占領政策の要請に副わんとしたものと解するのが相當である。(中略)從つて同令第四條により、何人も指定日以後は閉鎖機關の財産上の權利義務に變更を生ぜしめる限りにおいて、かゝる行爲は、それが法律行爲であると事實行爲であると、また裁判上の行爲であると裁判外の行爲であるとを問わず、一切爲し得ないものと言わなければならない。もとより同規定は司法裁判權を否定したものでも、既得權そのものを否定したものでもないことは言うまでもない。ただ敍上の限度において權利の行使は制限を受けるものと見るべきであり、從つて閉鎖機關に對し既存の權利の確認判決を求むるは格別、その給付判決を求むる如きは許されないものと解さなければならない。そうして債權者の建物收去土地明渡請求権を保全するため、閉鎖機關の財産である本件建物の處分行爲を禁止するは、まさに右所有權の権能を一時的にせよ制限するものであり、從つてかかる内容を有する假處分命令は閉鎖機關令第四條に牴觸するものたることは明らかであるばかりでなく、右被保全権利の行使自體が同條の規定により許されないものと解すべきであるから、本件假處分命令の申請はその理由なきものと言わなければならない。」